縁の下のコード〜保守・運用エンジニアが評価されない理由と変わりつつある現実〜
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台本
オープニング
【ジングル】 はい、どうもこんにちは。「雨宿りと WEB の小噺」、始まりました。Keeth こと桑原です。 今回もちょっとだけ、雨宿りしていきませんか。 今回のお題はですね、「縁の下のコード〜保守・運用エンジニアが評価されない理由と変わりつつある現実〜」。 ちょっとエモい話なんで、まぁ聞いてってください。
本題
つかみ:洗濯機の話から
- 最近ちょっと気になってることがあって。洗濯機の話から始めてもいいですか
- うちの洗濯機、底の方に排水フィルターがあって、そこに糸くずとか髪の毛とかが溜まる
- 定期的に外して掃除しないと排水が詰まる
- なんですけど、これ奥さん知らないんですよね
- 別に責めてるわけじゃなくて、知らなくて当然
- なぜかというと、僕がやってるから「当たり前に洗濯機が動いてる」
- これ、ITの保守・運用の話にそのまま繋がるなと思ってて
保守・運用エンジニアって何をしている人たちか
- システムやアプリケーションが今日も正常に動いていることを担保する人たち
- 障害が起きたら即対応する
- パフォーマンスが落ちてきたら原因を調べる
- セキュリティパッチを当てる
- ログを見て異常の予兆を拾う
- 表に出ることはほぼない。でもこの人たちがいなかったら、サービスは止まる
- システムやアプリケーションが今日も正常に動いていることを担保する人たち
なぜこの人たちの評価が低いケースが多いのか
- 一言で言うと「新しいお金を生まない」と見られるから
- 新機能をリリースすれば売上が上がるかもしれない
- 新規事業を立ち上げれば次の柱になるかもしれない
- でも保守は「今あるものを壊さない」仕事なので、貢献がマイナスを防ぐ方向にしか働かない
- 財務的には見えにくい価値
- 一言で言うと「新しいお金を生まない」と見られるから
それだけじゃなくて、悪循環もある
- 保守にいると新規プロジェクトにアサインされない
- → 新しい技術に触れる機会が減る
- → 「最近のこと知らなそう」と思われる
- → さらにアサインされない
- この負のループにハマっている人、僕の周りにも結構いた
- 能力がないからじゃなくて、チャンスが与えられていないだけのことが多い
- 保守にいると新規プロジェクトにアサインされない
僕の仮説:もう1個ある
- 「保守ばかりやってる=チャレンジ意欲がない」という誤った前提で判断してる上司・組織が一定数ある
- ちゃんと自己研鑽してる、新しい技術も追ってる、でもポジションが「保守担当」というだけで次の機会が回ってこない
- これは完全にもったいないと思う。スキルの持ち腐れ
すべての保守エンジニアが評価されないかというと、そうでもない
- 例えばGoogleが提唱した SRE(Site Reliability Engineering) というロール
- 「ソフトウェアエンジニアリングの手法で運用問題を解く」というアプローチ
- 保守・運用をエンジニアリングの仕事として再定義した
- 📎 https://sre.google/sre-book/eliminating-toil/
SREで面白い「Toil(トイル)50%ルール」
- Toilというのは「手作業で繰り返し発生する、自動化できるはずの作業」のこと
- Googleは「SREがToilに費やす時間は全体の50%以下にすること」をルールにしている
- 残り50%は自動化・改善・新しいエンジニアリングに充てるべき
- つまり「保守=ひたすら手を動かすだけ」ではなく、保守の中にちゃんと開発・創造の時間を組み込む設計をしている
もうひとつ面白い概念「エラーバジェット」
- サービスの「壊れていい許容量」をあらかじめ決めておくやり方
- 例えば「月間99.9%稼働」を目標にするなら「0.1%=約44分」の停止は許容範囲
- このバジェットが余ってる間は新機能をどんどんリリースしていい
- 使い切ったら開発を止めて信頼性改善に集中する
- 「信頼性」を数字で語れるようにしたというのがすごくて、保守の価値を定量化している
- 📎 https://renue.co.jp/posts/sre-site-reliability-engineering-slo-error-budget-practice-guide
- サービスの「壊れていい許容量」をあらかじめ決めておくやり方
日本のコンテキスト:「2025年の崖」
- 老朽化したレガシーシステムを刷新できないとDXが進まない、という経産省が言った話
- その裏で「そのレガシーを今まさに支えている人たち」の存在がある
- 大規模な基幹システムの保守は属人化していて、その人がいなくなったら終わる、というケースが6割以上
- これって評価が低い話どころか、組織のリスクそのもの
- 📎 https://www.seraku.co.jp/tectec-note/feature/hrlp_2025gake/
まとめ:保守・運用エンジニアの置かれている状況は3パターン
- ① 実際にスキルアップをサボっていて評価が低い(これは正直な話)
- ② スキルはあるのに、ポジションのせいでチャンスが回ってこないという構造的な問題
- ③ SREみたいなアプローチで保守を再定義して、ちゃんと評価されているケース
- 日本の多くの会社は②が多いんじゃないかな、というのが僕の仮説
最後に言いたいこと:「当たり前を当たり前にできる人」はすごい
- 洗濯機が動く、サービスが止まらない、メールが届く
- 誰かがそれを支えているから「当たり前」になっている
- それを「目に見えないから価値がない」ではなくて、「目に見えないからこそきちんと評価する仕組み」が必要
- SREのエラーバジェットみたいに、「信頼性を数字にする」という方向性はその一つの答えだと思う
エンディング
【ジングル】 さて、そろそろ今回もお時間です。 面白かったよーという方は、ぜひチャンネル登録もお願いします。話してほしいトピックや感想は、概要欄のフォームか 𝕏 で「WEB 小噺」でつぶやいてください。web はアルファベット、「小噺」は漢字でもひらがなでも大丈夫です! それでは、また雨宿りしに来てください。お相手は Keeth でした。さようなら! 【ジングル】